はるかぜの愛慕録 

君に馳せる、いくつもの愛

夜風の中でベンチに座って

薄暗い紺色の中で私たちは少しだけ街灯に照らされて、

 

君は飲ませてもらいたそうにわたしが差し出したペットボトルを一瞬見つめたのを、わたしは見逃さなかった。

こんな時までー、笑

 

こんな時までわたしに甘えたくて溶かされたくて目を潤ませる君と、こんな時までそのことに必ず気がつくわたし。そんな2人がベンチに座っていた。

 

 

 

足場が悪くて、昨日私たちは手を繋いだ

足場が悪いから、繋ぎたい手を繋ぐことができたよね。

 

行こう。また。2人で。

君がいたなら、どうやって写すだろう

昨日の夜中、まどろんでいたら君から優しい電話をもらった。

 

ああ、聞きたかった声

この声を耳に閉じ込めておけたらな。

 

そしてわたしは、君よりも君のことがわかってしまうから、それは厄介でもあるよね。

わたしのことを抱きしめてあげようと電話してくれた君だけど、本当は抱きしめてほしくてたまらない君。昨日一緒にいれたら、君を子供のように膝に乗せてあげて、優しくほどいてあげられただろう。

 

そそくさと電話を切ってしまった君だけれど、きっとたくさんページを手繰って選んで送ってくれたページだったのだろう。

付き合ってから、こんなに連絡を交換しなかったのは初めてだね、と、君が言っていた。うん、そうだね。そう返しながら、私は君の部屋で、枕に置いた君の腕時計に鼻をつけて横になっていた。ベットサイドには君とお揃いの本を置いて。開けっ放しの窓からは君みたいに静かで幼い夜風が吹き込んでいた。気づいてほしそうに。

 

なんでこんなに、君のことが好きだろう。

君もなんでそんなに、わたしのことが好きなの。

なんでわたしは、君のことがどこまでもわかるのだろう。

 

ずっと一緒にいようか、わたしたち。

君との電話が途切れてからも、そんなことを考えていた。

 

どうやって写すかな、君なら。

continue

赤い髪、早足

 

 

今うずくまって泣いている私を

抱きしめてくれるの、

 

未来の君だったらいいな

 

君がいいです

 

寄り添ってほしくて、叶わなくて、

 

寂しい。

 

未来の君は

私を抱きしめてくれているかなあ

未来の私は、君にありがとうと言って

今度は君を抱きしめてあげれるよ

 

いま、とてもさみしい。

小さく満ちる

どうしようもなく好きだ

出逢ってしまった、運命の人

君のこと、どうしようもなく好き。

 

小満の初日、ぬるい風が私の髪を泳がせる

泳いでいる髪がはたはたと唇を叩くのを感じながら、そう思った。ああ、君のこと好きだ、って。

 

満ち足り始めたのかもしれない

 

 

 

 

君と少しだけ乗った新幹線のなか、

 

このまま2人、どこかへ行ってしまおうよと、

心の中で囁いていた。

 

夏、小満の夜風の中で君に愛のポエトリーを綴った。

 

なんでこんな時まで足臭いのよ!と言ったわたしに、君が吹き出して笑ってしまった。

 

君が不器用で1番辛いのは君だよねと抱きしめた、包んだ肩は少し震えていた。

 

君とはずっと一緒にいるんだろうな、君の意地と甘えの狭間に優しく触ると、そんな確信が私の胸に根付いていることを改めて知るんだよ。

 

ケンカしてても食べないと言いながら、いつも最後はお皿が空っぽになっていかぎり。

君が本当はただ抱きしめてほしいこと、わたしが知っているかぎり。

 

あなたはきっと、わたしに抱きしめてもらうために生まれてきたかな。

わたしはきっと、あなたを抱きしめるために生まれてきたんだね。

君の好きなところ

 

君の好きなところ

昨日ファミチキを食べてたところ

食べてね、と渡したそぼろご飯、食べてくれてたところ

1時7分に布団に来てくれたところ

その時抱きしめてさせてくれたところ

朝起きたわたしにおいでと両の腕で包んでくれたところ

 

 

 

泣くことと途方に暮れることしか出来なかった私に、「会えなくても近くにいてあげよう。君がそうしてほしいなら僕もついていくから。近くのホテルに泊まろう。」と言ってくれた、あの時の君の目。目の奥。潤んだ表面。目の奥、芯のある光。

 

 

電車の中でおにぎりを食べてくれるところ

飲み物を飲ませてあげると、飲んでくれるところ

わたしのペットボトルの飲ませ方、君は下手だと思っているところ

だって人に飲ませたことなんてないから、わからないもん

君は食べる、私は食べさせる、その言葉のない愛の会話が私たちの形になっているところ

君がそれを嬉しく思ってくれているところ

 

これは特に特別。君のとってくれたホテル、窓を開けると穏やかな海、私が立ったまっすぐ正面に、小さな教会、光る十字架がこっちを向いていたこと。そこに君が導いてくれたこと。わたしに祈る場所をくれたのが、あの日君だったということ。

 

君は無意識にいつも私を導くところ。

 

コンビニで、お弁当を迷って、予想外のチキン南蛮弁当を選んだところ。

 

 

北小金駅、プラットホームの自販機で君が私に飲み物を選ばせてくれた時、全部の自販機を見させて選ばせてくれた君。結局私が選んだのはその時君が1番飲みみたかったジュース。それが君の愛とわたしの愛のやりとりの縮図。2人のそのかたち。君の愛と、わたしの愛。

 

わたしが過ごすコメダ珈琲の席の向かいに、誰がいることはなかったし望んでいなかったのに、今わたしの席の向かいにはMacを開いた君が座っていて、それをわたしが心から望んでいるところ。君がわたしをそうさせたところ、わたしを変えたところ。

 

コメダ珈琲にいる君が言ってくれたとこ。

ポーチを選んでほしいと、照れながらわたしに相談してきたところ。

君の愛は、純粋で、偏っていて、真っ直ぐで、ピュアで、歪んでいて、やっぱりとても純粋で、不器用なところ。

 

そしてその君の愛さえも、わたしが囲ってあげているところ、君もわたしに任せてくれているところ。

 

深いところも、表面的なところも、仕方なしに培ったものも、最果てから最果てまでの全てが、やっぱりわたしにないものを君はもっていて、逆もしかりで君の正反対をわたしはもっているところ。それが心地よくても、それが時に苦しくても、そうである限り2人が一緒にいることを肯定されていると思える、2人のピースのハマり方。

 

 

 

君の髪型は愛おしい、朝も夜も。

君の目は美しい、まっすぐ、わたしに芯を見せてくれている時や安心を語らうときも。そしてどこまででも塞いで、奥で甘えを訴えたいと願っている時の子供のような形のときも。

君の口は愛の象徴。その柔らかい形も、むっと閉じているのにわたしにゆるまされてむふっと笑ってしまうあの形も。

君の身体はヴィーナス像より美しい。抱きしめてくれている時の二の腕のたくましさよ。胸板の安心感。それを感じて眠る日々の終わり方以上の幸福な寝入り端などない。

君の足は臭い。臭いと言わせて喜ぶ君のためなら、ずっと少しなら嗅いであげてもいいかな。

 

 

 

君の好きなところ

 

君と過ごす日々の全て

愛も歓喜も悲哀も、君の全てに

君の好きなところを感じる。

 

目を閉じる

目を開ける

 

目を閉じる

目を開ける

 

どちらにも、君。

 

 

 

 

 

 

何年経っても、そうだと思います。

 

春風の愛慕録